相続税を算出するためには、被相続人が亡くなった相続開始日の時価で相続財産を評価する必要があります。普通預金であれば、相続開始日の残高がそのまま相続税評価額になるため、とても分かりやすくシンプルです。

しかし、土地や建物などの不動産の相続税評価額は、専門的な知識のない一般の方が算出するのは容易ではありません。

特に土地の場合、形状や広さを考慮して相続税評価額を下げることができるため、うまく活用することで大きな節税効果も期待できます。

税理士に依頼をするのであれば、誰に依頼をしても安心だと思われがちですが、計算方法によって相続税評価額は大きく異なるため、土地の評価減の活用を得意としている税理士に依頼するかどうかで、相続税額に数千万円もの差が生じることもあるのです。

今回は、土地や建物などの不動産の相続税評価額の算出方法と、評価額を下げる方法について詳しく説明します。

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相続税評価額とは?

相続税額や贈与税額は、対象となる財産の価額に応じて算出されます。相続税評価額とは、相続税や贈与税を算出するための財産の評価方法のことです。

この相続税評価額は、原則として相続発生日の価額によって計算されます。しかし、1つ1つ形状などが異なる土地の評価額については、国税庁の財産評価基本通達に基づいて評価をしなくてはなりません。

土地の相続税評価額は、実際に売買を行う際の実勢価格(時価)の70%ほどとなり、時価よりも評価額が低くなるようになっています。

相続税評価額は、あくまで相続税や贈与税を算出するための評価方法であって、遺産分割協議や遺留分の算定は、一般的に売却を想定した実勢価格(時価)で評価するため、注意が必要です。

→詳しくはこちら「【不動産と相続】遺産分割での土地・建物の評価方法
→詳しくはこちら「遺留分

相続税の申告漏れと追徴課税

相続税の申告と納付は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に行わなくてはなりません。

しかし、せっかく自身で申告をしても申告漏れがあったり、金額が不足していたりすると、延滞税、過少申告加算税、重加算税や無申告加算税といった追徴課税を課せられてしまいます。

反対に相続税を多く納付してしまったとしても、税務署はそのことを指摘してはくれません。税務署が指摘をするのは、申告が漏れている場合のみになります。そのため、相続税の申告は税理士に依頼をされる方が大半です。

しかしながら、相続税の申告の経験がほとんどない税理士も決して少なくはないため、税理士に依頼をしたからといって安心とも言い切れません

税金の申告にも相続税や所得税などの種類があり、税理士にはそれぞれの得意分野があります。相続税の経験が少ない税理士と、相続税を得意としている税理士では、納付する相続税の金額に数百万から数千万円もの差が発生することもあるのです。

多く納税してしまった税金は、もちろん還付を受けられますが、自動的に還付されるわけではなく、自ら更正の請求を行う必要があります。

また、相続税を多く申告してしまう原因の大半は、土地の評価によるものです。土地は形状などによって様々な評価減を活用することができるため、土地の評価減の活用を得意としている税理士が対応することで大きく評価額を下げ、相続税の減額に繋がります。

建物(家屋)の種類と評価方法

建物(家屋)の評価方法はとてもシンプルで、固定資産税評価額を使って算出します。

しかし、建物(家屋)と言っても、更に自宅や賃貸中の貸家、1棟所有の賃貸アパートなど様々な種類があり、それぞれ評価方法が異なるので、注意が必要です。

家屋(自宅等)の場合

亡くなった被相続人自身が利用していた自宅等の建物は、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。

家屋(自己利用)の相続税評価額=固定資産税評価額×1.0


したがって、被相続人の自宅の固定資産税評価額が1,000万円であれば、相続税評価額も1,000万円となります。固定資産税評価額は、固定資産税の課税明細書や固定資産評価証明書で確認することができます。

固定資産税評価証明書

貸家(有償)の場合

家賃を受け取って(有償)賃貸している家屋の場合、居住している賃借人にも借家権があります。そのため、貸家(有償)の相続税評価額は固定資産税評価額から借家権割合を差し引いた価額となるのです。

貸家の相続税評価額=固定資産税評価額×(1.0-借家権割合)

※借家権割合は全国一律30%(令和元年分)

借家権割合は国税庁のサイトで確認することができますが、令和元年分では全国一律30%となっています。

自宅と貸家の評価額

上記の計算方法から分かるよう、活用していない家屋を所有している場合などは、貸家にすることで相続税評価額を引き下げることができるのです。

賃貸アパート等の場合

戸建を貸家としているのではなく、賃貸アパートなどを所有している場合、借家権割合で減額することができるのは賃貸されている部分のみとなっています。

賃貸アパート等の相続税評価額=固定資産税評価額×(1.0-借家権割合×賃貸割合)

※借家権割合は全国一律30%(令和元年分)

仮に賃貸割合を50%とすると、差し引くことのできる借家権割合は15%になります。

賃貸アパート等の評価額

そのため、空室を減らし賃貸アパート等の入居率を上げることで相続税評価額を引き下げることができ、節税に繋がるのです。

使用貸借(親族間での無償の貸家)等の場合

家賃を受け取る通常の賃貸とは異なり、親名義の家屋に子供が無償で居住しているといったケースもよくあります。このように、金銭のやり取りはなく賃貸している状態を使用貸借と言います。

「使用貸借でも借家権割合が適用されるのか?」と疑問に思われる方も多いのですが、無償で賃貸をしている使用貸借の場合、借家権割合は適用されず、貸家として相続税評価額を減額することはできません。

借家権割合の適用を受けるためには、少なくとも固定資産税の2~3倍の家賃(年間)を受け取っている必要があります。

使用貸借の評価額

そのため、親族間だからと極端に低い家賃での賃貸では借家権割合の適用を受けることはできないのです。

建築途中の家屋の場合

リフォームなど、家屋の建築中に相続が発生した場合、建築途中の家屋も相続税の課税対象となります。建築途中の家屋に固定資産税評価額はなく、相続発生日までにかかった建築費用(費用原価)の70%が相続税評価額となります。

建築途中の家屋の相続税評価額=費用原価×70%



建築途中の家屋の評価額

どこまでが家屋の建築費用に含まれるのかなど、判断が難しい場合は税理士等の専門家へのご相談をおすすめします。

基本的な土地(宅地)の評価方法

土地(宅地)の評価には、路線価方式倍率方式の2通りの方法があり、一般的に公示価格の80%ほどが目安となります。

どちらの評価方法を利用するかは、宅地の所在地によって決まります。

路線価方式

路線価とは、国税庁が定めた道路に面している標準的な宅地の1㎡当たりの価額のことで、路線価方式は、路線価が定められている地域に宅地がある場合の評価方法になります。

この路線価に宅地の面積を乗じたものが、基本的な計算方法です。

路線価方式による標準的な宅地の評価額=路線価×宅地の面積

路線価は国税庁のホームページから確認することができ、1㎡当たりの価額が千円単位で表示されています。

【路線価図】

路線価図

(参考:国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表

路線価図では、画像の「200D」のように道路ごとの路線価が記載されています。この画像の場合、路線価が200千円のため、1㎡当たりの価額は20万円となります。

したがって、100㎡の宅地の相続税評価額を算出する場合、「路線価:20万円×宅地の面積:100㎡」となり、標準的な宅地の評価額は2,000万円となります。

あくまでもこの評価額の算出は基本となるもので、実際には土地の形状等を考慮し、補正率で調整を行い相続税評価額を算出します。

倍率方式

路線価が定められていない地域の宅地の評価額の算出は、倍率方式を使います。

路線価と同様に、倍率も地域ごとに定められており、固定資産税評価額に定められた倍率を乗じて計算します。

倍率方式による宅地の相続税評価額=固定資産税評価額×倍率

また、地域ごとに定められた倍率も、国税庁のホームページから確認することができます。

【倍率表】

倍率表

画像のように地域ごとに倍率が記載されており、上記の画像の場合、宅地の倍率は1.1倍となります。

したがって、固定資産税評価額が3,000万円の宅地の場合、「固定資産税評価額:3,000万円×倍率:1.1倍」となり、相続税評価額は3,300万円となります。

固定資産税評価額は、それぞれの土地の形状等も加味して定められています。そのため、倍率方式による相続税評価額の算出では、路線価方式のように土地の形状等を考慮して補正率で調整をする必要はありません。

分譲マンションの敷地権等の場合

マンションのように、ロビーやエレベーターなどの敷地が共有になっている場合、その共有部分も含めて相続税評価額を算出する必要があります。

まずマンションの敷地全体(土地)の相続税評価額を算出し、その評価額に持分割合を乗じて計算します。共有部分の持分割合は登記簿謄本(全部事項証明書)や売買契約書で確認することができます。

補正率を活用した土地の評価減

前述したように、相続税を多く納めてしまう原因の大半は、相続した土地の評価です。

土地は10区画あれば、それぞれ全て形状も広さも異なります。特殊な土地でなくとも、それぞれの土地の形状等を加味して補正率で調整しなければ、税金を納めすぎてしまったり、評価額が足りず追徴課税が発生してしまったりする可能性もあります。

しかし、この調整は専門的な知識がない状態では非常に難しく、たとえ税理士などの専門家であっても誰でも容易に活用できるわけではありません。

また、補正率にも奥行距離を考慮した奥行価格補正率や、角地の場合などの側方路線影響加算率など、様々な種類があります。

・奥行価格補正率
・側方路線影響加算率
・二方路線影響加算率
・不整形地補正率
・間口狭小補正率
・奥行長大補正率
・がけ地補正率
・規模格差補正率
・特別警戒区域補正率
            など

(参考:国税庁 法令解釈通達 財産評価「第2節 宅地及び宅地の上に存する権利」

補正率等を活用して土地の評価を減額したいとお考えの方は、土地や相続に強い税理士などの専門家へ相談されることをおすすめします。

土地の種類と評価方法

基本的な土地(宅地)の評価は、前述した路線価方式と補正率、倍率方式で計算することができます。

しかし、家屋同様、土地にも自用地や借地など様々な種類があり、それぞれ計算方法が異なるため注意が必要です。

借地権の場合

土地を所有しているわけではありませんが、土地を借りる権利(借地権)も相続財産に含まれ、相続税の課税対象となります。

借地権の相続税評価額は、所有している場合の土地の相続税評価額に借地権割合を乗じて算出します。

借地権の相続税評価額=自用地評価額×借地権割合

※自用地=借地とは異なり、他人が使用する権利のない土地

借地権割合は、路線価と同様に道路ごとに定められており、路線価図で確認することができます。

【路線価図】

路線価図

路線価が定められていない地域の場合は、倍率表に地域ごとの借地権割合が記載されています。

また、貸家と同様に親族間などで無償で土地を貸している使用貸借の場合は借地権自体が発生しません。

貸宅地の場合

貸宅地とは、建物を建てることを目的とした第三者へ有償で貸している土地のことをいいます。この貸宅地では、土地を借りている賃借人に借地権が発生し、賃借人等の第三者の建物が建っているため、所有者は自由に土地を活用することが出来ない状況となります。

そのため貸宅地の相続税評価額は、自由に土地を活用することができる通常の評価額から、借地権割合を差し引いた価額となるのです。

貸宅地の相続税評価額=自用地評価額×(1.0-借地権割合)

※自用地=借地とは異なり、他人が使用する権利のない土地

したがって、借地権割合が50%の地域で、自用地としての評価額が3,000万円の貸宅地を所有している場合、「自用地評価額:3,000万円×(1.0-借地権割合:50%)」となり、貸宅地の相続税評価額は1,500万円になります。

貸宅地の評価額

また、前述したように無償で土地を貸している使用貸借では借地権が発生しないため、貸宅地の評価減を活用することもできません。

貸家建付地の場合

貸家建付地とは、土地の所有者がアパートなどの賃貸用の建物を建築し、賃貸として貸し出している状態の敷地のことをいいます。

第三者が建物を建てている貸宅地とは異なり、貸家建付地は、土地の所有者自身が賃貸用の建物を建てている状態になります。

貸家建付地の評価は、借地権等の評価に利用する借地権割合、貸家等の評価に利用する借家権割合、そして賃貸アパート等の評価に利用する賃貸割合を使って算出します。

貸家建付地の相続税評価額=自用地評価額×(1.0-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

※自用地=借地とは異なり、他人が使用する権利のない土地
※借家権割合は全国一律30%(令和元年分)

例えば、借地権割合が50%の地域に、自用地評価額が5,000万円の土地を所有していたとします。この土地に賃貸用アパートを建築し、満室で賃貸割合が100%だとします。

この場合、「自用地評価額:5,000万円×(1.0-借地権割合:50%×借家権割合:30%×賃貸割合:100%)」となり、貸家建付地の相続税評価額は4,250万円となります。

貸家建付地の評価額

この計算式からも分かるように、賃貸アパート等は空室を減らすことで、建物の評価だけでなく、土地の評価も下げることができるのです。

小規模宅地等の特例

ここまでで説明したように、建物や土地などの不動産には様々な評価減の規定があります。

しかし、こういった評価減を活用してもなお、不動産の評価が高額となり、売却をしなくては相続税が支払えないという状況になってしまう可能性もあります。

相続不動産を売却することになれば、自宅を失う、事業が継続できなくなるという人も少なくはありません。

相続人がこのような状況に陥らないよう、小規模宅地等の特例という制度が設けられています。この特例は一定の要件を満たすことで、土地の評価を最大80%も減額できるのです。

相続不動産の評価額が高額になってお困りの方は、小規模宅地等の特例が適用出来るかどうか、税理士等の専門家への相談をおすすめします。

節税には不動産の評価減を活用!

建物や土地などの不動産は、地域や形状、活用状況などを考慮した様々な評価減の方法があります。特に土地は評価減の規定や補正率をうまく活用することで、大きな節税効果が期待できます

土地の評価額の規定や補正率は、専門的な知識のない一般の方はもちろんのこと、税理士であっても容易に活用が出来るというわけではありません。不動産の評価や相続に強い税理士に依頼をするかどうかで、相続税の金額が数百万円から数千万円変わることもあるのです。

また、相続税を減額するための特例は、不動産だけに限らず、様々なものが存在します。相続税の申告を控えている方は損をしてしまわぬよう、どのような特例が適用できるのか、一度税理士等の専門家に相談されてみてください。

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