夫婦の共有名義で購入した自宅や、親から相続を受けたまま相続登記をしていない実家、他にも建物の所有者が子供で土地の所有者が両親の場合など、所有者が複数人いる不動産は意外と多くあります。不動産の売却を行う場合、所有者全員の同意が必要となることは一般的にも知られています。
では、その所有者の中に判断能力が不十分な障害者や認知症の方がいる場合、不動産の売却にはどういった手続きが必要になるかご存知ですか?
後見人を選任せずに売却する方法や、後見人の選任から不動産売却までに要する期間は、多くの方が気になるかと思います。結論からお伝えすると、障害や認知症で判断能力が不十分であれば、成年後見人の選任が必要になります。
今回は、所有者の中に判断能力が不十分な障害者や認知症の方がいる場合の不動産売却について説明します。
目次
不動産の所有者と成年後見人
一口に不動産の所有者が複数人いると言っても、様々な状況が考えられます。
所有者が1人の場合
所有者が複数人の場合
成年後見人が必要な場合
不動産を売却する場合、所有者全員の同意が必要になります。そのため上記の図の中で誰か1人でも、障害や認知症で判断能力が不十分であれば、代理人として成年後見人を選任して、後見人から売却の同意等を得る必要があるのです。
成年後見人は、家庭裁判所に選任を申立ててから審判がくだるまでに、2ヶ月~5ヶ月ほど時間を要します。申立ての準備や、審判がくだった後にも必要書類の取り寄せなどで更に時間がかかるため、不動産の売却の予定等がなくても、早い段階で後見人を選任しておくことをおすすめします。
→詳しくはこちら「成年後見制度について」
障害や認知症で判断能力が不十分だと売買は無効
後見人の選任には時間も費用もかかるため、可能であれば後見人を選任せずに不動産を売却したいと考える方も多くいます。家族が代理人として、売買契約書にサインをすれば良いと誤解されている方もいますが、この考えは間違いです。
後見人ではない家族が代理人として売買契約を締結したり、判断能力が不十分な方が売買契約書にサインをしていても、その契約は無効となります。
逆に身体的な障害等があっても、判断能力に問題がなければ委任状を作成して、家族が代理で売買契約を締結することは可能です。
被後見人の居住用不動産を売却する場合
被後見人が施設に入所していたり、病院に入院していて、治療費のために自宅である居住用不動産の売却を視野に入れなくてはならないこともあります。
被後見人が居住用に利用している不動産を売却する場合、代理人である成年後見人が売却に同意したからと言って、そのまま売却の手続きを進められるというわけではありません。
成年後見人の判断だけで自由に被後見人の自宅が処分出来てしまうと、被後見人が住む場所を失ってしまう恐れがあるためです。
このようなトラブルを防ぐため、後見人は居住用不動産を売却する際には、家庭裁判所に居住用不動産処分の許可の申立てを行い、売却の許可を得なければなりません。家庭裁判所が許可を出さなければ、居住用不動産を売却することはできないのです。
上記の図からも分かるように、居住用不動産というのは今住んでいる不動産に限った話ではありません。過去に住んでいた不動産等、これから先、被後見人が住む可能性がある不動産も含まれるのです。
被後見人の非居住用不動産を売却する場合
将来的にも被後見人が居住する可能性のない非居住用不動産は、家庭裁判所に売却の許可を得る必要はありません。家庭裁判所の許可が必要となるのは、居住用不動産に限りです。
そのため、非居住用不動産の場合は、代理人である後見人から売却の同意を得ることが出来れば、売却を進めることが可能です。
所有者の判断能力が不十分な場合は成年後見人が不可欠
障害や認知症で判断能力が不十分な方がいる場合の不動産の売却は、きちんとした手順を踏まなければ、売買契約が無効になってしまうだけでなく、購入者から損害賠償請求をされてしまうトラブルにまで発展しかねません。
いざという時に、所有者本人もその家族も困ってしまわぬよう、早い段階で弁護士等の専門家へ相談することをおすすめします。
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※注意※
記事の執筆後に法令改正等が行われている場合、内容が古い可能性があります。法的手続きをご検討中の方は、弁護士・税理士・司法書士等の専門家への確認・相談をおすすめします。
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